「そういえば、お前って人妻だったんだよな」
「そうよ」
智子とは取材で知り合った。
といっても、どちらかが取材を受けるような有名人だったわけではなくて、オレはフリーのカメラマン、智子もフリーのライターだった。
オレは誰か有名なカメラマンの弟子だったこともなく、なんとなくその日暮らしのようにフリーでやっているだけだけど、この仕事は気にいっていた。
もともと口下手で、人とまともに話すこともできない。ところが、智子のようなライターと一緒に有名人をインタビューして、それを写真に撮る。
それが雑誌のページになったりした時には、まるで自分がその有名人からいろんなことを聞き出したようなそんな気持ちになれるんだよね。
智子とは、今の事務所で半年ほど前に知り合った。
20代後半の智子は、40歳を前にした俺にはとてもまぶしかった。
俺は今までいつでも結婚したことがなかったが、智子はすでにその時すでに結婚していた。
いつしか取材が終わると、そのまま食事に行ってその後必ずホテルにいく関係になっていた。
外見からいっても、旦那がいるようには見えない智子だけど、セックスが終わったあといつも留守番電話をチェックして、その後子供預けている保育所に電話するときに、ふと智子が人妻だということを思い出すのであった。
子供が熱を出したりしていて予定より早く迎えに行かないといけないことなんかあるらしいので、保育園からの留守電は定期的にチェックしていた。
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智子がホテルでセックスし終わった後、タバコを吸いながら留守番電話をチェックし、いつものように
「遅くなって申し訳ございません、最終保育園が閉まる時間には必ず参ります」
ってこういう電話をしてる時に、智子が人妻だという事を感じるのだ。
セックスが終わった後必ずこの電話をするのは、そのまま俺とホテルに泊まるつもりはないよ、という意思表示もあるのだろう。
だから、いつもセックスが終わった後は智子のこの電話のやり取りで現実世界に引き戻される。